ニートのてきとうエッセイ『おれじゃん』
夜。スマートフォンが光った。
女の子の後輩からメッセージ。
「話しませんか?」
僕は、急いで返信した。
「いいよ」
それからベッドを抜け出して、ロフトへ隠れた。
この子とは際どい話をすることが、今までもあった。
性的な話。不道徳な話。世間を殴りつけるような話。
童貞の僕には、貴重な女性の話し相手だ。
今夜もきっと、秘密の話に違いない。
それに、深夜に話したいというのだから、寂しいのだろう。
話がどんな風に展開してもいいように、僕は覚悟をしていた。
通話が始まった。
挨拶をして、雑談に入る。
内容は、他愛ないもの。
最近、何をしているの? 君はどう? 僕はこうだよ。
そうして、電話越しに温まっていくと、話は恋愛上のものに変わっていった。
若者。夜。電話。
恋の話をするには絶好のシチュエーションなのだろう。
「好きなタイプは?」
そういう話になる。
僕は相手の子を想起させるようなことを言った。
理性的で、知的。物事をよく考える女の子。
「君はどんな人が好みなの?」
彼女の恋愛対象は現状、男性だという事を僕は知っていた。
「うーん。好きというより、嫌いなタイプを挙げた方が早いかも」
正直に言うと、インテリとかイケメンの特徴が挙がったら、面白いと思った。
また、僕はそのいずれでもないから、期待した。
「あれこれと、考える人は嫌い。付き合うとナイーブになりそう」
なるほど。
「不健康そうな人もダメです。肉体は頑健な方が好みみたい」
ほぉ。
「モノを書くような人は一番付き合いたくないですね」
僕は可笑しくなって笑ってしまった。
「それ、おれじゃん」
女の子もクスクス笑って
「うん」
小声でそう言った。