文章の練習
清水良典さんの『2週間で小説を書く!』を参考に文章の練習をします。
今回は文章の断片からイメージを膨らませて、別の文章にすると言う練習だそうです。
元ネタは著書にあるのですが、孫引きになるためそのままの引用はしません。
ただ『鶏』というタイトルだそうです。
以下、私が膨らませた文章。
日曜であるにも関わらず、ポールは朝早くから部屋を出た。玄関から数メートル先、スタントン通りと書いてある標識のすぐ近くを、幸運にもあの鶏は歩いているところだった。
ポールは慎重に足を進める。じりじりと距離が近づく。1mほど近づいたとき、鶏は因縁の18番街を南に曲がった。
昨日、ここ18番街の曲がり角で、カールとその手下たちが半笑いで馬鹿にしてきたことをポールは思い出していた。奴らにバカにされたままではいられない。悔しさを勇気に変えて、ポールは鶏を追い、南に曲がった。
四軒分、間合いの取り合いをして一羽と一人は私道に入った。何の因果か、鶏はカールの家の玄関前の階段に登った。
倒した鶏をカールの家に運ぶ手間が省けた。ポールはレスリングの選手の様に前傾姿勢で鶏を睨みつける。
「あれは闘鶏だぜ。お前なんか爪でちょっと引っかかれただけで、ママに泣きつくに決まってる」
カールの憎たらしい顔が鶏の顔と重なった。ポールの狙いは鶏の首だ。
玄関先の芝生を蹴って階段の上の鶏に突っ込んだ。ポールは首を掴んだ手ごたえを感じた。しかし闘鶏場から逃げ出した鶏にも意地がある。
一羽と一人はもつれ合い、のたうち回った。ポールの背中や鶏の爪が玄関扉に何度も当たる。
もみ合いの末、ポールは完全に後ろを取った。チャンスを逃がさず首を掴んで立ち上がり、鶏の自由を両手の中に封じ込めた。鶏は目を見開き、翼を広げバタつかせている。しかしポールは絶対に首を離さなかった。
「どなたですか?」
ぼんやりとした声を上げながら、小太りのガキ大将がドアを開けた。
トロフィーを天に捧げるかのように、ポールは鶏の首を掴み上げ、カールの前で仁王立ちした。