米津玄師さんによるチェンソーマン主題歌『KICK BACK』を考察してみた!
チェンソーマン主題歌の『KICK BACK』を聴きました!
僕は涙が出るほど感動しました。音楽についての知識は浅いです。コアなファンでもありません。原作も未読です。アニメだけ追っています。(執筆時は2話目まで放送されている)
でもなんで感動したのか自分で知りたい。そう思って記事を書いています。
もちろん芸術に対する解釈は鑑賞者次第ですから、ぼくの考察、解釈は間違っているかもしれません。多くの人とは違うかもしれません。
それでも自分なりに考えてみました。
太字が歌詞で()が僕の解釈や考察になっています。
努力 未来 A BEAUTIFUL STAR ×4
(努力して、未来に向かえば幸せを掴めるよ!という標語。美しい星は幸福と言う意味だと思う。これを4回も言っている。世界が曲の主人公に対して言っている)
ランドリー 今日はガラ空きで ラッキーデイ
(コインランドリーが空いていて幸運だった。言い換えればそれ位の事で幸せだと感じる人がこの曲の主人公。おそらく貧しい)
かったりい 油汚れも これでバイバイ
(べたついた自分の中にある煩悶、悩みを落としたい。納得したい。わざわざ油汚れと言っているところに悩みの厄介さ、落ちにくさが表れている)
誰だ 誰だ 頭の中 呼びかける声は あれが欲しい これが欲しいと 歌っている。
(人間の欲望という本性からの呼びかけ。)
幸せになりたい 楽して生きていたい この手に掴みたい
(言いづらいけど、確かにみんなが思っていることを肯定的に歌っている。この手に掴みたい。は言い換えれば、今は掴んでいないと言う事。幸せじゃない!)
あなたのその胸の中
(あなた=我々リスナー、鑑賞者。あなたも前述したように幸せになりたいと心の中で思っているでしょう? という呼びかけ)
ハッピーで埋め尽くして レスト イン ピースまで行こうぜ
(幸せを積み上げて天国に行こう。努力して、未来に進めば幸福になれるらしい!レストインピースはラテン語を基にする標語らしい。天国=幸福として捉えた)
いつか見た地獄もいいところ 愛をばらまいて
(曲の主人公は地獄側の人間。あまり正義の側、つまり強い存在ではない。でも地獄にも良い所はあるから、こっちを向いて愛して欲しい!)
アイラブユー 貶してくれ 全部奪って 笑ってくれ マイハニー
(アイラブユー=幸せへの片思い。 マイハニー=幸福。幸福がこっちを見てくれないなら、攻撃して欲しい、蔑んでくれてもいい。だからこっちを向いてくれ! 自傷してでも幸福に愛されたい! 幸福になりたいんだ!)
努力 未来 A BEAUTIFUL STAR ×3
(努力して未来に向かえば幸せになれる)
なんか 忘れちゃってんだ
(努力して進めば報われる。本当にそうだっけ?)
努力 未来 A BEAUTIFUL STAR ×4
(疑問を抱きつつも、世間でよく言われる幸福になる方法を自分に言い聞かせる。4回も!)
4443で外れる 炭酸水
(4444が揃えばもう一本ジュースを貰えるという自動販売機が昔あった。この曲の主人公はそれを外しているのでアンラッキーな人物)
ハングリー 拗らせて 吐きそうな人生
(空腹過ぎて吐きそう。貧しい人生。あるいは、ハングリー精神、空腹をバネに上を目指すような精神論が肯定されているこの世界が気に入らない。吐きそうだ!)
「止まない雨はない」より先に その傘をくれよ
(言葉や精神論、綺麗ごとではなく物質的な支援が欲しい。傘を持つ人は傘を差しながら、傘を持っていない人に声を掛けるだけなのが現状だ。)
あれが欲しい これが欲しい すべて欲しい
(本能が欲求を叫んでいる!)
ただ虚しい
(でも欲求だけでは満たされない。欲しいハズなのに。大事な何かが欠けている? 本能からくる欲求に疑問がある)
幸せになりたい 楽していきたい
(幸せになりたい、楽していきたいとは思っているが、具体的にどうすればいいのか分かっていない。欲求があるのに虚しかったりする。心の中が定まっていない)
全部滅茶苦茶にしたい 何もかも消し去りたい
(どうすればいいか分からない。だから怒る。心の中に破壊衝動と自分ごと消えたい自傷衝動が同居している)
あなたのその胸の中
(心の中でどうすればいいのか悩んでいる。あなた=リスナーならあなたもそうでしょう? という呼びかけ。あるいは曲の主人公の心中が荒れていると言う描写)
ラッキーで埋め尽くし レスト イン ピース まで行こうぜ
(幸運によって天国=幸せになろう! でも2番の初めで主人公は炭酸水が当たらなかった。自分でも運による幸せの獲得は難しいと理解している)
良い子だけ 迎える天国じゃ どうも生きられない
(良い子=運の良い子だけが幸せになれる世界では生きられない。主人公は悪人寄りの人間。強くない。そして善人だけあるいは幸運な人間だけが成功するこの世界に疑問がある。そういう世界では生きていたくないと思うくらい嫌い)
アイラブユー 貶して 奪って 笑ってくれ マイハニー
(攻撃しても良い、馬鹿にしてもいい、だからこっちを見てくれ幸運よ! 1番では”全部奪って”だったのに”全部”が消えている。消して欲しくないモノができたのかもしれない。1番と2番の違いは疑問を抱くようになったところだと思う。だとしたら奪われたくないのは疑問に思う心だろうか)
努力 未来 A BEAUTIFUL STAR ×3
(努力して未来に向かえば幸せになれる)
なんか忘れちゃってるんだ
(決められた幸せになる方法では何かが足りない! 自分の中に世間一般の言説に対する疑問がある。でもそれは具体的な言葉にはなってない。だから”なんか”という曖昧な表現)
ハッピー ラッキー こんにちはベイビー
(運が良かったために幸せにも赤ちゃんが生まれた。ベイビーは愛する人に対するよびかけでは無い気がした。キャラソンとしての表現とダブらせているのかも。キャラソンとして捉えるなら、マイハニーもベイビーもマキマさんになるのだろうか)
良い子でいたい そりゃつまらない
(良い子=努力して未来へ進めば幸せになれると思っている人。そうでありたいと赤ちゃん、あるいは新世代が言った。それではつまらないと主人公は言う)
ハッピー ラッキー こんにちはベイビー ソー スイート
(努力して未来に向かえば幸せになれる。そう考えるのは甘いんじゃない? sweetは可愛いでは無く”甘い”とか”未熟な人”に対して言った言葉として解釈した)
努力 未来 A BEAUTIFUL STAR ×3
なんかすごい 良い感じ
(なんとなく正しい感じ”だけ”ある 良い感じがするだけじゃない?という皮肉)
努力 未来 A BEAUTIFUL STAR ×4
(努力して未来に向かえば幸せになれる。そう誰かが言っている)
(女性の嘲笑)
(努力して未来に向かえば幸せになれると言っている張本人。むやみに信じている人を嘲笑っている。本気でそう思ってる? 馬鹿じゃない?)
解釈は以上になります。
この曲は単なるキャラクターソングではないのではないか。と言うのが僕の感想です。キャラソン・アニソンとしての捉え方は書きませんでした。原作ファンは怒っているかもしれませんね。
でも原作未読の僕が感動するくらいの曲ですから、なにか普遍的な訴えるものがあると思います。それが”努力して未来に向かえば幸せになれる”という単純な刷り込みに対する疑問なのではないかなと思います。
もし僕の解釈通りであれば、米津さんは相当、社会に対する洞察が深いです。
最近になって運が無ければこの世界では上手く生きられないよね。というのが分かってきてしまっています。
成功と言うのは遺伝子や家庭環境に大きく左右されるだろうと言うのが最近の潮流です。なのに”努力して未来に向かえば幸せになれる”とか”止まない雨は無い”などと奇麗ごとを正しいかのように吹聴する人がいる。
あれ?それって本当に正しいの? そんなに単純な世界だっけ? そう言った疑問がこの曲に込められているように感じます。
それから一貫してこの曲は弱者に寄り添っているように感じます。曲の主人公は貧しいでしょうし、普通はあまり言えない”楽して生きたい!”という感情にも肯定的です。
しかも善人だけが救われる世界に疑問がある。
本当に多くの人を対象にした曲だと思います。米津さんは相当優しいお人柄なのでしょう。
ただ、現代社会に疑問があっても解決策は見いだせていないように思います。
だからこそ””なんか忘れちゃってるんだ”や”すごくなんかいい感じ”という抽象表現にとどまっているのかなと思います。最後の女性の嘲笑も”まだ結論はでないんでしょう?”とこちらを挑発するかのようにも聞こえます。
だたこの曲は本当に優しくて、幸せに対して切実だなと思いました。
僕も心の中で幸せになりたいと思っていたから、感動したのかもしれません。
冒頭と同じような事を言いますが、芸術の解釈は人それぞれです。
たぶん僕の解釈も滅茶苦茶だったりするのでしょう。的外れだと言う人も居るでしょう。
でも楽しかった。
みなさんも独自に解釈してみてもいいかもしれません。本当に楽しいですよ。
しかし、作曲してくれた米津玄師さんに迷惑が掛からない範囲でやりましょうね。
読んでくれた方、ありがとうございました!